Webrainでは「Performance Technology: Working in the Flow State」というタイトルで、フロー状態ついてレポートをまとめています(レポートのサマリーはこちら)。そこで今回のSeattle Watchでは、その内容の一部を抜粋する形で、フロー状態とは何か、そしてフロー状態を実現するためのテクノロジーについて紹介をしていきます。
皆さんは、仕事に没頭して時間が経つのを忘れてしまうような感覚に陥ったことがあるでしょうか?それは、周囲からの刺激があっても注意散漫にならず、目の前のタスクに集中し、あらゆる雑念が取り除かれたような感覚です。この状態に入ると生産性も高まることに気づくでしょう。こうした感覚はフロー状態(Flow State)と呼ばれています。
人類は有史以来、間違いなくこの感覚を体験してきましたが、1975年にハンガリー系アメリカ人の心理学者であるミハイル・チクセントミハイがフロー状態と名付けるまで、この感覚は深く研究されてきませんでした。現在ではフロー状態に関する脳の研究が進み、ドーパミン、ノルエピネフリン、エンドルフィン、アナンダミド、セロトニンといった神経伝達物質が特に活発になることが分かっています。ここで重要なのはフローが単なる感覚的なものではないということです。脳内では集中力や精神的なエネルギーが高まり、快感が誘発された後には余韻が残るという科学的で測定可能な現象が起きているのです。 https://snowbrains.com/the-brain-science-behind-flow-states/
一人の人間の脳がフロー状態に入ることは理解できますが、これと同じ現象がチームの中でも起こりうることをご存知でしょうか?チームが目標達成のために集中しているとき、その集団が通常のパフォーマンスレベルを超えるフロー状態に入る可能性があるのです。ある研究では、チームフローは、各メンバーの脳内の情報統合とそれに伴う神経同期が非常に高い状態の時に、チームメンバーの間にハイパー認知状態が作り出されると説明しています。また、プロのバイオリニストであるダイアン・アレン氏は、「フローは伝染する。私たちがこのポジティブなフィードバックループの中にいると、それは他の人にも伝染していく。そうやって私はオーケストラと聴衆をエネルギーで導いてきた。フロー状態にあることで、私たち全員のベストが引き出される。」と述べています。 https://www.psychologytoday.com/us/blog/the-athletes-way/202110/why-team-flow-is-unique-brain-state
フロー状態は私たちの仕事や普段の生活に影響を与えるため、多くの企業や団体が研究を行ったり、フロー状態に確実かつ効果的に入るためのトレーニングツールや方法論を開発したりしています。その中には、雑念を取り除いて集中状態に入るためのハードウェアも開発されています。今回Webrainでは、このフロー状態について「Performance Technology」というタイトルでレポートにまとめ、この分野で活動する企業を「研究・学習」、「学習・トレーニング」、「アプリ・デバイス」、そして食品・サプリメント、環境要因などを含む「その他」の4つのカテゴリーに分類して整理しました。(もっと詳しくお知りになりたい方は、こちらにご連絡を)。
私はガジェットやテクノロジーが好きなので、フロー状態を可能にすると謳ったデバイスにも興味を持っています。そのひとつが、Flow Labのスマホアプリである「Growth Mindset Coach」で、年額53ドルから利用できます。同社はこの製品を「ユーザーの生産性を高め、より多くのフロー状態を見つけるためのAIメンタルフィットネスコーチ 」と説明しています。同アプリはユーザーへの一連の質問を通じて、ユーザー個人のFlow Profileを作成し、フロー状態を達成するために必要な能力のうちトレーニングすべき領域を特定します。そして、このプロファイルに基づいて設計されたトレーニングスケジュールと一連のオーディオセッションが提供されます。私自身はまだこのアプリを試していませんが、アプリストアで4.8/5.0と非常に高い評価を得ており、多くのユーザーが満足していることが分かります。
フロー状態をユニークな形で実現するソリューションも出てきています。Microdose VRは、VRゴーグルと連動するソフトウェアアプリ(ゴーグルなしでも使用可)です。同製品では、コントローラーの操作に合わせて、色や形がダイナミックに変化し続ける視覚的な創造物を作り出すことで視覚野を刺激し、集中力と創造性を高めることができます。こちらは、製品のデモビデオを見た方がよりイメージが伝わると思います。
職場でフロー状態を実現することのメリットは容易に理解できますが、レポートを纏める中でこれを実現する上での大きな課題が1つ見えてきました。それは、ここ数十年のワークスペースの設計のトレンドでもあるオープンオフィスです。多くのワークスペースは、従業員同士のコラボレーションやコミュニケーションを促進するために、壁が低く(あるいは全くなく)、デスクが近くにあるように設計されています。しかし、このようなオープンな環境では、雑念を取り除き、フロー状態に入ることが難しくなります。
皆さんのワークスペースはどうでしょうか?周囲を気にせず、集中して仕事に取り組めるでしょうか?PCやスマホの通知や同僚の会話に邪魔され続けていないでしょうか?もし、フロー状態に入りやすい空間を作ることができれば、今まで経験しなかったような、より高い生産性をブーストアップできるかもしれません。世界のトップアスリートが実践していることが、最近はビジネスパーソンにも求められるようになってきています。フロー状態を制することが成功への第一歩だと、このリサーチを通して強く思うようになりました。
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