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  • Toshi Akashi

Issue 129 The Future of Connected Economy: 5G and Beyond - Part 2

今回はThe Future of Connected Economy: 5G and Beyondというタイトルのレポートの2回目の紹介になります。5Gの普及によって、モバイル通信が持つ現在の様々な制限がなくなっていくとすれば、私たちは、何も考えることなく本能的に利用できるインターネットの真の姿を想像することができるようになるかもしれません。


 

現在日本では携帯料金の値下げが政権の肝いり政策となり、大手モバイル通信会社が揃って新しい低価格の通信プランを発表しています。また5Gという言葉も良く耳にされるかと思いますが、この5Gで何がどこまで変わっていくのか、その価値や効果を実感できる人はまだ少ないと思います。

これまで我々のレポートでは、様々な技術の変化や変遷を出来るだけ専門用語(Jargons)に頼らず、誰でもわかる簡単な言葉(Layman’s Terms)で説明することを優先して制作してきました。今回の5Gのレポートでも医療現場、生産工場、小売店舗、イベント施設など事例から我々の生活や仕事にどのような変化をもたらすのかに焦点を当てています。

そして、モバイル技術の先進国フィンランドのUniversity of Ouluによる「5GがInternet of Thingsの実現者(エネイブラー)になる」という予測を紹介しました。このエネイブラーという表現は的を得ていると思います。 https://www.studyinternational.com/news/the-oulu-connection-where-6g-research-and-tech-education-collides/

米国の認知科学者で、人間とコンピューターのインターフェースの専門家として有名なドナルド・ノーマン氏は、1998年に「Invisible Computer」という著書を発表し、本当にコンピューターが我々の生活で役に立つためには、それがコンピューターであるという認識が利用者から排除されるほど使い勝手が良くなるという主張をしています。 https://www.amazon.co.jp/Invisible-Computer-Products-Information-Appliances/dp/0262640414

また同じ時期にマイクロソフトの共同創業者であるビル・ゲイツ氏もインターネット用のブラウザーが開発された時期に、ウェブが我々の生活の一部になっていくことを予測し”Web will soon be woven into all aspects of lives”というメッセージを発表しています。その中で同氏は、「ウェブが中心となったライフスタイルでは、インターラクティブなネットワークを使って情報を収集し、それを活用するような生活になる。そのネットワークは当たり前のように存在し、何も考えることなく本能的に利用できる。」と語っています。 https://www.deseret.com/1997/7/20/19324497/web-will-soon-be-woven-into-all-aspects-of-lives

Webrainではこれらの言葉を引用しながら2003年頃からスマホやウェブが生活の一部に織り込まれていく(woven)世界について話をしてきました。ただその当時は、このような話に賛同される方は少数派でした。2月に地鎮祭が行われたトヨタ自動車が主導する未来都市の実験プロジェクトの名称が「Woven City」と呼ばれるのも、もしかしたらこれらの先駆者のメッセージの影響があったのではないかと私は感じています。

そしてまさに現在、5Gが実用化されるタイミングが来ており、ICT産業の先駆者が思い描いた世界が一気に現実に向かうターニングポイントにいるのではないかと私は強く確信しています。前回のSeattle Watchでも50年サイクルの大きな時代の変化にも触れましたが、今回のレポートが5Gサービスの開始と共に、快適なインターネットが当たり前に存在する「Invisible Internetの世界」、つまりモバイル通信において、値段、機器、場所、それに回線速度などの制限の呪縛から解放された「本能的なネットワーク」が実現する世界をイメージするヒントになれば嬉しく思います。


 

<5Gを活用したテックプレーヤー>


Mutableは、より高速なインターネットとより良いサービスを顧客に提供するために設計されたパブリックエッジクラウドを開発している。これはサーバー事業者が所有する未使用領域を活用して、必要なユーザーに貸し出すという仕組みである。共同設立者のAntonio Pellegrino氏は、5Gネットワークによって超低遅延クラウドの実現が可能になることを認識しており、5Gを利用してユーザーのいる位置から近くにあるサーバーの計算能力にアクセスを可能にすることで、デバイスの動作を高速化することができる。この製品によって、サーバー事業者はセキュリティーを強化しながら新たな収益を得ることが可能になる。


BadVRのデータの可視化や分析用のプラットフォームは、データをより簡単に発見して分析できるよう設計されている。同社は5Gの通信速度を利用して、救急隊のセキュリティー担当者や、スマートシティーのアプリケーションにデータを提供することを目指している。従来の2D画面で見るデータよりも3D の方が60%以上記憶に残ることが研究で明らかになっているため、このプラットフォームでは3Dプレゼンテーションを採用している。現在、救急隊員をターゲットユーザーとして開発している2つの製品は、AROC(拡張現実オペレーションセンター)と3Dによる天気の可視化である。


NaviLens は、コンピュータービジョンと独自の二次元コードを公共の場で使用し、視覚障がい者がアクセスしやすいナビゲーションを提供している。DdTagsと呼ばれる正方形のコードは、よりシンプルでカラフルなQRコードである。このコードは、どんな素材にも印刷でき乗り換え駅や博物館の壁などに貼り付けることができる。DdTagをスマホでスキャンすると、アプリは徒歩での行き先案内や現在位置情報を音声で指示したり、スキャンしたDdTagに紐づけられた乗り換えスケジュールやルートを表示したり、プロモーション用のコードからYouTube動画を起動する。現在はスキャン可能な画像数に制約があるが、5Gが可能にする高速データレートはクラウドの計算リソースへのアクセスを加速させることため、この制約を解決し、よりシームレスで正確なナビゲーション情報を提供することが期待されている。

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