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  • Toshi Akashi

Issue 115: The Emergence of Civic Tech - Part 1

今回は、The Emergence of Civic Techというレポートの1回目の紹介になります。スマートシティーのプロジェクトが計画通り進まない事例が出てきている中で、市民の関与(エンゲージメント)と権限委譲(エンパワーメント)に焦点を当てたシビックテックと呼ばれる領域への注目が高まっています。


 

Webrainは2018年のレポートの中で、未来学者やSF作家が何十年にもわたって愛用してきたコンセプトである「スマートシティー」について解説しました。その時点では、多くのスマートシティーの計画が実現可能な段階に達しているように見えました。重要だと見えたのは、スマートシティーを現実のものにするために、官民共同のプロジェクトが数多く進行中であったことです。輝かしい例として、トロント市とグーグルが推し進めたSidewalk Labsは、190エーカーのウォーターフロントを最先端技術とデータを駆使したコミュニティーに変革するという野心的な計画をもっていました。

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しかし2020年に入ると、スマートシティーの当初のビジョンは、少し大げさで、もしかしたら少し見当違いだったかもしれないことが明らかになってきました。つまり、「人々のためにテクノロジーが何をすべきか」よりも、「テクノロジーには何ができるか(技術偏重の考え方)」にプロジェクトの目的が置かれ、最終的には市民が本当に必要としているものとは一致しない危険性が出てきたのです。グーグルでさえ、市民からのプライバシー侵害への反発に耐えることができず、トロントのプロジェクトで実際に許可が下りたのは12エーカーの地区のみでした。そして、今年5月にはこのプロジェクトからの完全な撤退を発表したのです。

その中で改めて台頭してきたのは、市民のエンゲージメント(市民と自治体の相互関与)とエンパワーメント(市民への権限移譲)という考え方であり、テクノロジーを使って市民の抱える特定のニーズに焦点を絞ったプロジェクトが登場してきています。コラムニストでVRを使った都市開発のモデリングをしているOneRealityの共同創業者でもあるSheldo Tatsuno氏は、「本当の意味でのスマートな街は、スマートな市民を育てる。つまり、街とは単にビルやスマートな街路の集積を意味するのではなく、より良い生活を夢見てそれを追い求める市民自身のことを指すのである。」と述べています。 https://www.forbes.com/sites/cognitiveworld/2019/03/03/the-evolution-of-smart-cities/#694c28c45df5

スマートシティーには市民のエンゲージメントが不可欠なことが分かってきています。結果として、地方自治体は「シビックテック」を通じてより効率的に市民にサービスを提供するソリューションを模索し始めているのです。慈善団体のKnight Foundationでは、このシビックテックを「市政の向上を目指して市民に情報を与え、関与させ、政府と市民を相互に結びつけるために使用されるテクノロジー」と定義しています。 https://knightfoundation.org/features/civictechbiz/

シビックテックのプロジェクトは、従来のスマートシティーのような規模や壮大さには欠けるかもしれませんが、技術的には実現可能であり、現実の世界にいる市民がすぐに必要とするニーズに焦点を当てています。例えば、カリフォルニア州サリナスでは、人々が街をより便利に移動するための新しい方法を試すために、市民にリアルタイムの交通状況を提供するポータルを提供しています。アリゾナ州メサでは、市民がクラウドソーシングのプラットフォームを使って、自分たちのコミュニティに実装してほしいプロジェクトを提案したり、そのプロジェクトに投票することができます。また、ワシントン州シアトルの「Find It, Fix It」というアプリでは、市民が迅速かつ簡単に道路の陥没などの問題を報告し、市がすぐに修理業者を派遣できるようにしています。これらは全て、Webrainがシビックテックの台頭と呼ぶ動きを体現しており、市民と政府のエンゲージメントを高めているのです。

最終的にシビックテックは、市民を自分たちの住む街の管理や運営のプロセスに引き入れる役割を果たすでしょう。ベンチャーキャピタルのOmidyar Networkの投資パートナーであるStacy Donehue氏は、このシビックテックを「人々が公共政策に関する意思決定に参加し、その発言力を高め、市民の声を市政に反映させ、市民へのサービスを改善させることで、市民と自治体の関係を強化するために展開される技術」とも定義しています。空高くそびえ立つガラス張りのビルや空飛ぶ車が乗客を乗せて駆け抜けるといったようなスマートシティーの一般的なビジョンの実現はもう少し待たなければならないかもしれませんが、それ以前にテクノロジーを使ってできることはまだまだあります。今後、可能な限り効率的な方法で市民によるコミュニティーの形成が支援され、市民が効果的に街づくりに関与し参加するようになれば、これまでにないベネフィットを得ることができるのではないでしょうか。 https://www.forbes.com/sites/quora/2017/09/19/what-is-civic-technology/#70766f9c3ecc


 

<シビックテックを提供しているプレーヤー>


The City of Salinas (CA) with Opendatasoft (https://www.cityofsalinas.org)

カリフォルニア州のサリナスでは、Opendatasoft社と共同でオープンデータポータルを開発し、人々が街をより便利に移動するための新しい方法を試している。このポータルは、OpendatasoftのデータシェアリングプラットフォームとWazeのクラウド型のリアルタイムトラフィックアプリ(無料)を活用している。両社の提携によって、サリナスでは、Waze Connected Citizens Programと呼ばれるプログラムを通じて、公開されている交通データを収集、統合、そして共有することができる。この情報を共有する目的は、車のドライバーが必要とする情報をリアルタイムで提供することである。同市は、データを活用して通勤渋滞が起きている場所やドライバーが⾛行ルートを選択する方法を理解し、交通渋滞の緩和を支援している。


Neighborlandは、地方自治体と利害関係者がオンライン上での協力を支援するコミュニケーションプラットフォームを開発しており、関係者はより公平な方法で都市プロジェクトに参加することができる。カスタマイズ可能なこのプラットフォームでは、地方自治体はプロジェクトの初期段階でプロジェクトの詳細とイニシアチブを市民に伝えることができる。プロジェクトの掲載ページでは、インターラクティブなマッピングツールを使用することで、市民からデザインに関するコメントを得たり、アンケート調査やプロジェクトへの寄付を市民に依頼することもできる。また、市民の参加度合いを測るための指標も組み込まれている。アリゾナ州のメサでは、Neighborlandを使用したプロジェクト資金の管理やプロジェクトのアイデア募集を行っている。サンフランシスコの企画部門でも、同サービスが提供するパブリックエンゲージメントのウェブサイトを利用して、セントラルウォーターフロント・ドグパッチ地区の開発を行っている。


シアトルでは、スマートフォンのアプリを使って市民が簡単に市内での様々な問題を報告できるようにしている。それらの問題には放置車両、道路のアスファルト陥没、落書きなどがある。ユーザーはこれらの問題を文章で説明する以外に、スマホで撮影した写真と位置情報のタグ(ジオタグ)によって正確な情報と場所を知らせることができる。しかしこのようなアプリは意図しない目的のために使用されることもある。それは市内における違法ホームレス野営地の報告である。ホームレス野営地の撤去が進まない市の対応に焦りを感じた市民活動家グループが、ホームレスの問題に更なる注意を呼びかけるために、アプリに報告を殺到させることも起きている。

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