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  • Toshi Akashi

Issue 108: Longevity Economy: New Normal for Seniors - Part 2

実際の年齢ではなく細胞年齢を見る。老化を科学し、加齢による衰えのメカニズムを発見する研究が進んでいます。この市場の成長を支える遺伝子検査など老化を科学する産業は、現在のインターネット経済に匹敵する成長を今後見せるかもしれません。

 

今回は、Longevity Economy: New Normal for Seniorsというレポートの2回目の紹介になります。まず、私が今の仕事に就くきっかけになったある出来事のお話をしましょう。約25年前の1994年、私はニューヨークの大学で学位取得に向けて日々勉強に励んでいました。ある日、同じ学部の友人から「インターネットを見に行こう」と誘われました。インターネットを見る?私には意味が解りませんでした。アメリカの大学ではインターネットはEメールやデータベースとして広く利用されていましたが、それは通信手段であって「見て楽しむモノ」という認識はありませんでした。 その時私が見たモノ、それはNetscape(現Firefox)というブラウザーに表示された政府や企業のホームページだったのです。当時はテキストやイメージをハイパーリンクで繋げただけのお粗末なホームページでしたが、インターネットを介して視覚的な楽しみが出来ることは、確かに画期的な大事件でした。そしてインターネットに出遅れていたマイクロソフトも1995年の秋にInternet Explorer(IE)というブラウザーが標準搭載されたWindows 95をリリースし、インターネットは爆発的に普及することになったのです。 もしも、新型コロナのパンデミックが10年前、いや5年前に起こっていたら?と考えたことはないでしょうか?その当時のインターネット環境を考えると、テレワークや自粛生活は今よりもさらに不自由であったことは容易に想像できると思います。 なぜこのような話を紹介したかというと、インターネット産業に匹敵するような大きな産業が今生まれようとしているからです。Global Market Researchは、遺伝子検査の市場が2024年までに220億ドル規模に成長すると予測しています。そして、この成長を牽引するのが老化を科学する分野であり、加齢による衰えのメカニズムの研究などが含まれているのです。 https://www.telegraph.co.uk/technology/2018/12/29/dna-testing-kits-set-years-hot-christmas-gift-happens-data/ https://www.forbes.com/sites/tinawoods/2019/01/11/longevity-could-reach-billions-in-2019-and-is-no-longer-just-the-preserve-of-billionaires/#2cf76bb3668f さらに遺伝学者のGeorge Church氏は、「現在の遺伝子配列の利用は1980年代のインターネットと同じである。つまり存在こそすれまだ誰も使っていない状態であり、その後のブラウザーの登場と共にインターネットコマースが始まり、時代の引き金になった。同じことがこの業界で起こるだろう。」と述べているのです。 https://www.forbes.com/sites/tinawoods/2019/01/11/longevity-could-reach-billions-in-2019-and-is-no-longer-just-the-preserve-of-billionaires/#2cf76bb3668f これは遺伝子検査などの最先端技術を使って老化の仕組みを分析し、それを健康管理に活かすことで、趣味や娯楽への活力の維持や増進につなげようとしているのです。このレポートでは、UNITY Biotechnology、Juvenescence、Life Biosciencesという老化を科学する企業を紹介しています。これらの企業は、老化という現象を遺伝子や細胞レベルで科学的に分析し、実際の年齢ではなく細胞年齢の特定や老化を抑制する薬の開発などに活かそうとしています。 「生きがい」という言葉をよく聞きます。これは英語にはない言葉として、そのまま「Ikigai」と訳されることもありますが、今回のレポートで取り上げた記事では、「生きがい」を「朝起きる楽しみ」と絶妙な表現で紹介をしています。 https://www.bbc.com/worklife/article/20180710-whats-it-like-working-past-your-100th-birthday 朝起きるのが楽しみになるような毎日を技術で支援する経済、それが理想的な長寿経済と言えるでしょう。現役世代の皆さんにとってはこのようなワクワク感は金曜日の夜だけかもしれませんが、退職後は毎日、明日が楽しくなくてはならないのです。そう考えるとこの長寿経済が今のインターネット経済に匹敵する

 

ぐらい急成長しても不思議ではないでしょう。 <老化を科学しているプレーヤー> UNITY Biotechnology (https://unitybiotechnology.com/) UNITY Biotechnologyは、健康とは人体が正常に機能し、年齢に関係なく老化に関連した病気にかかっていない期間であると定義している。同社は、関節炎、視力低下、認知機能低下などの老化に関連する症状を遅らせたり最小化する薬を開発している。UNITY Biotechnologyは、2017年にVenrock、ARCH Venture Partners、Mayo Clinic Ventures、Peter Thiel's Founders Fund、Bezos ExpeditionsなどからシリーズBで1億5,100万ドルを調達しており、2018年5月に上場している。 Juvenescence (https://juvenescence.ltd/) Juvenescenceは、老化の生物学的原因を研究し、そこで得た研究知識を使用して老化や虚弱を治療する医薬品を開発することで人間の寿命を延ばそうとしている。そのために、同社では新会社(AgeX Therapeuticsなど)を設立し、学界や他企業から技術ライセンスをしたり、長寿を研究する科学者や研究機関(Buck Institute for Research on Agingなど)との合弁企業を設立している。同社が研究する技術には、細胞老化の減速、神経変性の遅延と逆転、老化した細胞の破壊、老化した臓器の置換、遺伝子編集などが含まれている。 Life Biosciences (https://lifebiosciences.com/) Life Biosciencesは、より包括的な長寿の研究を追求している。ハーバード大学医学部の遺伝学の教授でもある共同創設者のDavid Sinclair氏によると、同社は年齢に伴う老化に関して、幅広い研究を行っているユニークな存在であると述べている。Life Biosciences の研究には、ミトコンドリア機能障害(細胞内のミトコンドリアが別の疾患により正常に機能しない状態)や細胞老化(細胞が分裂能力を失った状態)などが含まれている。同社では、6つの子会社が個別のプロジェクトに取り組んでいるが、どの企業もマサチューセッツ州ケンブリッジにある研究所を使用している。

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