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  • Toshi Akashi

Issue 136 - Human and Robot Symbiosis Part 1


今回は、「Human and Robot Symbiosis:人間とロボットの共生」というタイトルのレポートの1回目の紹介になります。「所有」から「利用」へとシフトする消費変化の波は、ロボット産業にも押し寄せています。ロボットがより便利に使える時代が迫る中で、わたしたちは、自分のスキルやこれからの生き方などを根本的に見つめ直す時期が来ているのかもしれません。


 

ロボットは生産の現場などでは既に身近な存在になってきており、その領域が広がろうとしています。今後は誰でも扱えるような存在になってくると考えられており、これまでのロボットを所有するという考え方から、サービスとしてオンデマンドで利用するという考え方が強くなってくるでしょう。そのモデルをコンピューター業界の決まり文句である「アズ・ア・サービス」に当てはめた「ロボット・アズ・ア・サービス(RaaS)」という新しい市場が世界で広がってきています。

今回のWebrainレポートでは、このRaaSの事例をセキュリティー(警備)、ウエアハウス(倉庫)、ファクトリー(工場)、クリーニング(清掃)、さらにデリバリー(配達)の5つの分野に分けて紹介しています。

例えば、ビルの夜間警備に関するコストを抑えるため、Cobalt Roboticsでは、パトロールや侵入者の捜索と検知のための室内用ロボットを製造し、施設内の巡回や遭遇者の身元確認などを行っています。これによって警備員の人件費を削減できるだけでなく、警備担当者もリモートから安全に業務を遂行できるようになります。同社では月単位でロボットをリースしており、その契約にはソフトウエアのアップデートや専門家によるサポートも含まれています。 https://www.vox.com/2018/10/8/17913420/security-robot-cobalt-robotics-knightscope-slack-yelp

一方、物流の中で重要な役割を担っているウエアハウス(倉庫管理)業務において、最も悩ましい課題が季節的な仕事量の大幅な変動です。そこで、必要な時に必要なロボットをレンタルすることできるRaaSがこれまでにない新しいソリューションとして注目されています。民間調査会社のABI Researchでは、今後6年以内に何百万台ものロボットが5万カ所以上のウエアハウスで導入され、2018年の4,000カ所から大幅な増加になると予測しています。 https://interestingengineering.com/the-real-robotics-revolution-arrives-as-a-service

RaaSモデルで提供されているLocus Roboticsが製造するLocusBotというロボットは、タスク・インターリービング(倉庫内の1回のトリップで複数のタスクをこなす手法)を採用し、(作業員が移動に費やす時間を削減しつつも)ロボットと作業員が同時に動くことで、最も効率的に倉庫業務をこなす方法を実現しています。 https://www.dcvelocity.com/articles/47213-locus-robotics-passes-200-million-units-picked-milestone-for-global-retail-and-3pl-partners-b

最後にクリーニング(清掃)については、家庭用の清掃ロボットの市場がこれまで拡大してきているのとは対照的に、商業施設でのロボットによる清掃はまだ黎明期と分析されています。Insights by rlist.ioの記事では世界市場で10社ほどがRaaSによるクリーニングを提供しており、その使用料は1時間あたり4ドルから6ドル、月額で215ドルから1,500ドルと発表しています。

Peanut Roboticsが開発する多機能家事ロボットは、ホテルやアパートで1時間単位でレンタルすることができ、同製品の前延伸アームは工具などの頑丈なものから、本や眼鏡などのデリケートな家庭用品まで握ることができるため、将来的には清掃だけでなく、障がい者の日常生活のサポートなどにも用途が広がると期待されています。 https://www.hotelmanagement.net/operate/rlh-corporation-introduces-housekeeping-robot

このような事例から見えてくるのは、大がかりで設置場所を選ぶハードウエアとしての産業用のロボットという考え方から、安全で誰でも使える身近なロボットサービスという考え方への大きな変化だと思います。

今後オートメーション技術の進歩によって人間の行う仕事の種類が減るという懸念も高まっています。また一部ではベーシックインカムという労働と収入を分離する考え方まで議論される時代になりました。AIやロボット技術の進化で問われるのは、今後私たちはどのような働き方や生き方をしていきたいか?という根源的な問いへの答えなのかもしれません。


 

<RaaSを提供するプレーヤー>


Cobalt Roboticsは、パトロールや侵入者の捜索と検知のための屋内ロボットを製造している。人間と協働して機能するこのロボットは、人間とのインタラクションを考慮してプログラムされており、マッピングとセンシングの機能を備えている。同製品に搭載されたAIは、ドアが開いたままになっているといった異常や、探索エリア内の潜在的な問題を識別することを可能にしている。また360度のRGBセンサー、赤外線センサー、サーマルカメラ、深度センサー、超音波センサー、LiDAR(レーザーを用いたリモートセンシング)、環境センサーが搭載されており、さらに従業員証をスキャンして身分確認を行う機能もある。


Locus Robotics (https://locusrobotics.com)

Locus Roboticsが製造するLocusBotというロボットは、RaaSモデルで提供されており、倉庫事業者がニーズに合わせて機能を拡張することができる。このロボットは自律的にピッキング場所まで移動して作業員と合流する。作業員はロボットに取り付けられたディスプレイに表示される指示に従って、棚から商品をピッキングして梱包したり棚に商品を戻したりする。Locus Roboticsでは、タスク・インターリービング(倉庫内1回のトリップで複数のタスクをこなす手法)を採用し、(作業員が移動に費やす時間を削減しつつも)ロボットと作業員の両方が動くことで、最も効率的に倉庫業務をこなす方法を生み出している。


Peanut Robotics (https://peanutrobotics.com)

Peanut Roboticsが開発する多機能家事ロボットは、ホテルやアパートで1時間単位でレンタルすることができる。同製品は、怪我を防止するために人間よりも非力に設計されている。このロボットは機械学習を利用して性能を向上させており、最終的には人間の約4分の3の速度でタスクをこなせるようになる。CEOのJoe Augenbraun氏は、このロボットはホテルのハウスキーピングの業務補助を目的としていたが、将来的には客室のミニバーの補充や宿泊客の荷物の運搬なども計画していると述べている。

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