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SW 244 – 2026年の米国消費トレンド

  • ryee62
  • 1 日前
  • 読了時間: 6分

皆さま、明けましておめでとうございます。2026年もどうぞよろしくお願いいたします。本年最初のSeattle Watchでは、マクロな視点から米国の消費動向を概観したうえで、今後の米国の消費者環境を再形成する可能性のある4つのトレンドをご紹介します。

米国の消費動向は、リテールにとどまらず、さまざまなセクターのビジネスに大きな影響を与えています。米商務省が発表した7〜9月期の実質GDPは、季節調整済み年率換算で前期比4.3%増となり、前期の3.8%増からさらに加速しました。表面的には米国経済は好調に見えますが、この数字を受けて「生活が楽になった」と感じる消費者はほとんどいません。GDPが大きく伸びている一方で、生活実感はむしろ悪化しているという矛盾が生じています。


世論調査では、米国成人の約68%が現在の経済状況を「貧しい」と評価しており、特に食料品や生活必需費の上昇が家計を圧迫しています。象徴的なのがコーヒーで、インスタントコーヒーの価格は前年比で22%上昇し、一般的な商品が贅沢品に変わっていく感覚が、消費者心理を冷やしています。


GDP成長を支えているのは主に上位所得層であり、下位層は成長の恩恵をほとんど受けていません。上位10%の富裕層が全体の消費の約半分を占める一方、下位80%は貯蓄を切り崩しながら生活を維持しており、K字型経済(所得階層別や企業業種別の収入・業績グラフが、アルファベットの「K」のように上向きと下向きに分かれて開く)がより鮮明になっています。中間層でも支出姿勢は変化しており、年収10万ドル(約1,500万円)を超える世帯であっても、1ドルの価値を強く意識し、不要な支出を避ける傾向が広がっています。その象徴が、WalmartやSam’s Clubといった小売大手への購買の集中です。Sam’s Clubでは、焼きたてクロワッサンの大型ボックスを5.98ドルから4.98ドルに値下げしただけで販売量が2倍になっており、生活実感が改善しない中で、富裕層でさえも「値頃感のある小さな贅沢」に安心を求めているのです。


このような状況を踏まえると、2026年の米国の消費トレンドはどのように変化していくのでしょうか。2025年11月に The New Consumer が実施した調査では、米国の消費者環境が、今後4つの「変革的な力」によって再形成されつつあることが明らかになっています。


クリエイターエコノミーが大きなビジネスへと成長

クリエイターエコノミーは、もはやインフルエンサーマーケティングの枠を超え、実体を伴う経済圏へと進化しています。Z世代およびミレニアル世代の45%が自らをコンテンツクリエイターだと認識し、40%はそれをフルタイムのキャリアとして追求することに強い関心を示しています。また、彼らの31%が「商品カテゴリーにおけるクリエイターの専門性」を最も重要な要素として挙げており、42%が従来型広告よりもクリエイターによる推奨を信頼しています。


クリエイター主導のコマースを象徴する存在がTikTok Shopです。運営2年目の2025年には、米国における総商品取扱高が150億ドルを超えると予測されています。Charm.ioのデータによれば、TikTok Shopの売上の約60%は動画経由で生み出されており、20万人以上のクリエイターがコンテンツを通じて収益を得ています。一方で、その収益分布は極めて偏在しています。トップ1%のクリエイター(約8,450人)が、2025年10月までの過去12か月間における米国の動画販売額77億ドルのうち、53%を牽引しています。なお、トップ10%のクリエイターの場合、2025年10月時点の平均月間手数料(売上)は3,290ドルとなっています。


GLP-1革命:複数セクターの変革

OzempicやWegovyに代表されるGLP-1薬(やせ薬)が急速に普及しています。Circanaのデータによると、2025年9月時点で米国全世帯の約23%(約3,000万世帯)で、家族の中に少なくとも1人のGLP-1使用者がいる状況です。この数字は前年の19%から増加しています。また、使用者の93%が体重減少を実感しており、72%はさらなる減量を望んでいます。注目すべき点は、91%が薬の使用開始以降、良い意味で「別人のように感じている」と回答していることです。生活の質の改善は広範に及び、80%が健康状態の向上を、74%が運動量の増加を、51%が性欲の向上を報告しています。


消費控えが懸念される一方で、GLP-1使用者は食品・飲料への支出を増やしています。薬の使用開始から1年後、CPG食品・飲料への支出は36.8ポイント、外食などのフードサービスへの支出は24ポイント増加しています。背景には、量を減らす代わりに質の高い商品へシフトする動きがあります。実際、フィットネス・ウェルネス製品で51%、エナジードリンクで39%、美容製品で35%のネットポジティブなアップグレードが見られています。また、56%が「食べる量が減った分、高品質な食品を選べるようになった」と回答しており、同じく56%が「食事そのものをより楽しみたい」と述べ、薬の使用前よりも「味」を重視するようになったと答えています。


一方で課題もあります。GLP-1の使用を中止した人のうち、目標体重を維持できたのは42%にとどまり、56%は体重が一部または完全に戻っています。この結果は、GLP-1の再使用サイクルと、長期的な体重維持を支援する製品・サービスの重要性を示唆しています。


長寿最適化が主流に

米国人の約3分の1が、エネルギー、外見、長寿といった健康の向上を目的に、日常的に積極的な選択をしていると自己認識しています。この傾向は若年層と富裕層に強く見られ、Z世代・ミレニアル世代の43%が自分を「最適化志向者」と捉えている一方、X世代以上では24%にとどまります。The New Consumerの調査によると、消費者は「できるだけ長く生きること」(27%)よりも、「日々のエネルギーやパフォーマンスの向上」(49%)への支援を重視しています。


こうした意識の高まりを背景に、血液検査は日常的な行動になりつつあります。消費者の81%が過去1年以内に採血を経験しており、そのうち47%は複数回検査を受けています。背景には、Z世代・ミレニアル世代の65%が、医師が現在提供している以上に詳細な健康情報を求めているというニーズがあります。支払い意欲も高く、46%が利便性と網羅性の高い検査に対して年間100〜1,000ドル以上を自己負担する意思を示しています。さらに、血液検査を受けた人の25%、Z世代・ミレニアル世代に限ると40%が、検査結果をChatGPTなどのAIツールにアップロードして分析したと回答しています。これは、AIによる健康インサイトへの高い受容性を示しており、若年層の46%が汎用AIに自身の健康データを預けることに信頼を寄せています。


二つのアメリカ:富の二極化が加速

Moody’s Analyticsのデータによると、高所得層の米国人(上位10%)が米国の消費支出のほぼ半分を占めており、この集中はさらに加速しています。この状況は、同レポートが消費者ブランドにとっての「二つのアメリカ」と呼ぶダイナミクスを生み出しています。全体では、消費者の20%が過去6か月間にウェルネス・フィットネス製品、果物・野菜、サプリメント・ビタミンなどでプレミアム製品へアップグレードしたと回答する一方、22%はダウングレードしています。その結果、労働者階級の46%が「多くの製品は高所得者向けに設計されている」と感じているのに対し、上流階級では12%にとどまっています。この認識のギャップは、「アクセス可能なプレミアム」を掲げるブランドにとって、課題であると同時に機会でもあります。消費の二極化は、富裕層向けのプレミアム製品と、大衆市場向けに手の届く価格でプレミアム体験を提供する価値革新型の二重戦略を示唆しています。


このように、2026年の米国の消費者像は、いくつものパラドックスを内包しています。こうした環境下では、従来の一律な市場理解や価格戦略は通用しません。重要なのは、多様な消費者セグメントを的確に捉え、どこにアップグレードしたい価値があり、どこで支出が切り詰められているのかを見極めることです。事業機会とリスクを冷静に見定めつつ、戦略をしなやかに進化させていく企業だけが、持続的な成長を手にすることができるでしょう。


Webrain Production Team

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