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Yudai Musha

Issue 196 - Webrainインターン生のシアトルでの挑戦

今回のSeattle Watchでは、Webrainで約半年インターンとして働いてくれた武者くんから、シアトルでの留学経験や生活事情について紹介してもらいたいと思います。身近に米国での留学を検討されている人がいらっしゃる方や、今後シアトルにお越しになる方の参考になれば幸いです。


 

私がシアトルでの留学を決断したのは大学3年生の3月で、就職活動をしていたタイミングでした。もともと映画で見るような海外での大学生活に憧れがあったのですが、パンデミックの影響もあり、日本で通っている大学の協定留学は停止しており、就職しようと思っていました。そのような中、高校時代からの友人が、就職活動そっちのけで南アフリカに留学に行くことを決めたと知りました。彼は高校時代もアメリカ留学に飛び出すような人で、そんな彼から、「その気になって探せば、目的を達成する手段はいくらでもあること」や「一度限りの人生、自分に素直に生きていけば良いということ」ということに気づかされました。将来人生を振り返った時に「留学をしてみたかった」という後悔をしたくないと思い、その日から留学の情報収集を始め、最終的に見つけたものがIBP留学でした。IBP留学は、OPT(Optional Practical Training)制度(1年の留学後に1年の有給インターンを実施できる制度)を利用した実践的なプログラムを提供しており、社会人も参加していることから、様々なキャリアを考える上で有意義だと感じたことが決め手になりました。


留学先にシアトルを選んだ理由はワシントン大学がシアトルにあったためです。同大学は、Financial Times 2023では世界研究ランキング12位U.S. News & World Report 2023ではベスト・ビジネス・スクールランキング20位に選ばれています。過去の経験から、よりチャレンジングな環境を選んだ方が上手くいくということが分かっていたので迷いはありませんでした。また全米で最も美しい図書館の1つにも選ばれているハリーポッターの世界のようなSuzzallo Library(スザロ図書館)The Quad(クワッド)の桜並木噴水越しに見えるマウント・レーニアの景色も美しく、とても気に入っていました。結果的に、この選択は正解だったと思います。世界中から来ている野心溢れる学生との出会いを通じて、以前より色々なことに挑戦するようになりました。


私は気がついたら、クラスメイトと起業プロジェクトに取り組み、資金調達ピッチにまで出場していました。この起業プロジェクトでは、元Microsoftの社員や起業家の方にメンターとして協力して貰い、エンジェル投資の約束をしてもらえました。その他、日本の大学で所属している法学部のゼミに、米国国務省で働いていた法律家の方をお招きするといったことも実現できました。野心に満ち溢れた周囲の人から刺激を貰って行動力がついたこと、米国の多様性(移民や宗教の歴史)によって醸成されてた寛容さや挑戦を後押しするカルチャーのおかげで、面白そうだと思ったらとにかくやってみる、困ったら人を巻き込んで思いを実現させるというマインドセットが身につきました。Webrainのインターンでは、あらゆる分野の第一線で活躍する起業家や専門家からの講義を通じて、米国のビジネスカルチャーや最新のビジネストレンドを深く知ると同時に、日本に対する理解を深めて日本人としてグローバル舞台で戦っていくためにはどうするべきかを自分の頭で考えることができました。このように留学期間を通して得た出会いは、私にとって大切な財産になっています。


その一方で、シアトルに留学して感じたのは、日本人の留学生のプレゼンスの低さです。パンデミック前の2019年から2020年における、在米留学状況を反映した留学者総数とWorld Bank公表の国別人口を割ったデータによると、日本人の在米留学者の割合は日本全体の人口比で約0.001%(1,000人につき1人)。他のアジアの国々と比較すると、中国は26倍、インドは13倍、台湾は6倍の在米留学者数だそうです。さらに、台湾人のパスポート保有率が60%程度と言われる中、2022年の外務省の統計では、日本人のパスポートの保有率は17%に留まっています。先進国としてグローバルリーダーの育成を掲げ、世界で最も信頼のあるパスポートの発券国(ビザを取得せずに渡航可能な国・地域の数が多い)である日本が、国際競争が激化する中でこのような状況であることには危機感を覚えます。


この状況は米国での急激なインフレや近年の円安の影響とも関連しており、日本からの留学生にとっては経済的に厳しい状況です。ラーメン1杯3,000円の世界なので、外食は控え、昼食まで自炊している学生も多いです。私の場合、シェアハウスで生活費(家賃・食費込み)や雑費もすべて含めた一ヶ月の平均が約1,000ドル(1ドル=150円換算で15万円程度)でしたが、これでもかなり倹約できている部類になります。1ヶ月1,300~1,500ドルはかかるものだと思っておくのが無難だと思います。


留学中のプライベートの過ごし方は、人それぞれですが、私の場合は放課後にクラスメイトと一緒にIMAという大学のジム・スポーツ施設に通い、現地の学生と一緒にバスケやサッカーを楽しみました。また、休日には季節に応じてアウトドアを楽しむのもお勧めです。エメラルド・シティとも呼ばれるシアトルは、オリンピック国立公園レーニア山国立公園に代表される大自然に囲まれており、夏季にはハイキング、冬にはスキーやスノーボードを楽しむことができます。またピュージェット湾ではホエール・ウォッチングのツアーもあり、運が良ければザトウクジラ、シャチ、アザラシなどの野生の生き物に出会うことができるかもしれません。シアトルはRainy Cityとしても知られ、夏以外は曇りや小雨の日が多い街です。そのような環境からかコーヒー文化が発達し、街の至るところにカフェがあるため、カフェ巡りをしてみるのも面白いです。


少し話を戻すと、米国留学中の日本人学生の就職活動では、ボストンキャリアフォーラム(通称ボスキャリと呼ばれ、毎年外資系企業も含め100社以上の企業が、学生は3日間で合計8,000人以上が参加している最大規模のイベント)を検討する学生が多いです。その他にも、ボスキャリと同様の会社が運営するロサンゼルスキャリアフォーラムや大学のJSA(Japanese Student Association)という学生団体が運営するキャンパスでのキャリアイベントへの参加という選択肢もあります。また、今はオンラインでも就職活動に参加できるので、時差を考慮しながら取り組む人も一定数いました。私自身は、留学期間は米国でしかできないことに集中しようと考えていたので、就職活動は最小限に抑えてオンラインで取り組んでいました。


米国留学は費用面では負担が大きいですが、それに見合う価値のある投資だと思います。米国は、世界中から人、モノ、カネ、情報が集まる超大国であり、時代の潮流を最先端で感じることができる環境です。また均質的と言われる日本社会ではあまり見られない多様性や、その中で生じる新たな機会や課題など、これほど視野が水平的に広がる国もないのではないかと思います。


最後に、私が留学を決断してから現在に至るまで大切にしてきた行動指針があります。それは「面白そうだと思ったらやってみる。現状の能力や状況を言い訳にせず、できる方向で考えてみる」です。留学をするときに、誰もが感心するような明確な目標があったわけでも、語学力があったわけでもありません。それでも充実した留学生活を送ることができたのは、湧きあがってくるワクワクの感情に蓋をせず、少しの手間をかけて、そして少しの勇気をもって、飛び込んでみたからだと思います。その中で、小さな目標ができ、沢山の人と出会うことで、情報や価値観がアップデートされていきました。これからも、自分の想いを大切にして、何事も前向きに取り組んでいきたいと思っています。この記事が、少しでも皆さまのお役に立つことができれば幸いです。


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