今回のSeattle Watchは、最近のニュースのヘッドラインを埋め尽くしているChatGPTについてです。開発元のOpenAIは、Microsoft からの多額の出資を受けたことで本来のオープンな存在ではなくなってきているという批判はありますが、ChatGPTを活用した様々なユースケースが怒涛の如く生まれてきており、2か月で1億ユーザーを獲得したスピードには驚愕するばかりです。
ChatGPTの話題が最近のニュースのヘッドラインを埋め尽くしています。新バージョンの GPT-4も先日リリースされたばかりの中、ちょうどChatGPTが自ら書いた簡単な自己紹介があるので、それをここで紹介します。
「Chat GPTとは何か?」と入力すると...
「こんにちは!私は、OpenAIが作成した大規模言語モデルのChatGPTです。ディープラーニングアルゴリズムを使用して大量のテキストデータを学習させることで、さまざまな質問やプロンプト(指示)に対して人間のような応答を生成することができます。私は、質問に答えたり、情報を提供したり、人と自然な言葉で会話することができます。私は、役立つ情報を提供することで、対話する人を支援することを目的にしています。
OpenAIは、人類にとって安全で有益な方法でAIを開発・発展させることを目的とした、研究者やエンジニアからなるAI研究所です。OpenAIは、イーロン・マスク、サム・アルトマン、グレッグ・ブロックマン、イリヤ・スーツケバー、ジョン・シュルマン、ヴォイチェフ・ザレンバといったテクノロジーのビジョナリーによって2015年12月に設立されました。同社は、人類にとって安全で有益なAIの創造と普及をミッションとしています。OpenAIは、ディープラーニング、自然言語処理、ロボティクスなど、さまざまなAI関連分野の研究を行っています。また、高度な自然言語処理モデルであるGPT-3や、強化学習アルゴリズムを開発・比較するためのツールキットであるOpenAI Gymなど、AIモデルやツールの開発にも取り組んでいます。さらに、AIリテラシーと知識の共有を促進するために、AI関連のリソース、研究論文、教材を提供しています。」(注:Chat GPTに英語で質問して得た回答を日本語へ翻訳)
上記の2つのパラグラフは、人間の手を介すことなく、完全にアルゴリズムによって生成されたことを考えると非常に驚きます。またここで触れられていないのは、ここに記載されたビジョナリーリーダーたちが8年前にOpenAIを設立した際、10億ドルもの資金を投入していたという事実です。これは、彼らがAIの進歩をどれほど信じていたかの証と言えます。当時イーロン・マスクは、AIの成長を社会に有益な方向へと導き、有害な使われ方をしないようにしたいと述べています。 https://www.businessinsider.com/history-of-openai-company-chatgpt-elon-musk-founded-2022-12#openai-released-an-early-demo-of-chatgpt-in-december-and-the-conversational-chatbot-quickly-went-viral-on-social-media-1
OpenAIは設立後に3つの大きな出来事を迎えています。まず、2018年にイーロン・マスクがTeslaとの利益相反などを理由にOpenAIの取締役を退任しました。そして、2019年にはOpenAIは非営利団体から営利企業へとシフトしました。さらに、同年にMicrosoftから10億ドルの投資を受けて、同社のAI技術をAzureクラウドプラットフォームに導入するための複数年のパートナーシップを開始しています。2023年初めには、MicrosoftがOpenAIの49%の株式と引き換えにさらに100億ドルを投資したことが確認され、Microsoftは出資額を回収するまでOpenAIの利益の75%を得るとしています。 https://techcrunch.com/2019/07/22/microsoft-invests-1-billion-in-openai-in-new-multiyear-partnership/
OpenAIがMicrosoft の出資を受けたことについて、誰もが喜んだわけではありません。この契約が結ばれた直後、イーロン・マスクはOpenAIが設立当初のビジョンから大きく離れようとしていることに不服を表明して、自身のTwitterで次のようにつぶやいています。「OpenAIは、Googleに対抗するためのオープンソースとして、非営利企業の形で作られた(だから Open AIと名付けた)が、今はMicrosoftに実質的に支配されたクローズドソースの利益追求の会社になってしまった。私が意図したものとは全く違う。」しかし、同氏の批判を受けながらもOpenAIのチャットボットは2022年11月のローンチからわずか2ヶ月で1億人のアクティブユーザーを獲得しています。金融機関のUBSによると、ChatGPTは史上最も急速に成長したオンラインアプリケーションとなっています。ちなみに、1億人のアクティブユーザーに到達するまでに、Tik Tokは9ヶ月、Instagramは2年半かかっています。 https://www.reuters.com/technology/chatgpt-sets-record-fastest-growing-user-base-analyst-note-2023-02-01/
ChatGPTはビジネスシーンでどのように活用されるのでしょうか。この質問について、もう一度Chat GPTに尋ねたところ次のように答えてくれました。
「ChatGPTは、ビジネスで様々な使い方ができます。ここではいくつかの例を紹介します。
カスタマーサービス: ChatGPTは、顧客や消費者に即座にサービスやサポートを提供するために使用できます。よくある質問に答えたり、製品やサービスに関する情報を提供したり、さらには問題のトラブルシューティングを支援します。
営業サポート: ChatGPTは、製品やサービスに関する質問に答えたり、顧客のニーズや好みに応じてパーソナライズされた提案をしたり、販売プロセスを支援します。
リードジェネレーション:ChatGPTは、質問、情報提供、関連リソースに導くことで、ウェブサイト訪問者と対話し、リード(見込み顧客)を特定するために使用できます。
市場調査:ChatGPTは、顧客のフィードバック、好み、意見を収集し、ビジネス上の意思決定や製品・サービスの改善に役立てるために使用できます。
トレーニングや教育:ChatGPTは、コンプライアンス、製品知識、顧客サービスなど、幅広いトピックについて従業員に個別のトレーニングや教育を提供するために使用できます。
全体として、ChatGPTは、企業が顧客と関わり、サポートを提供し、業務を改善するための洞察を収集するための効率的で費用対効果の高い方法を提供することができます。」
(注:Chat GPTに英語で質問して得た回答を日本語へ翻訳)
FiatやKiaなどの自動車メーカーは、メタバース上でChatGPTを利用することで、顧客体験を向上させて自動車販売の支援につなげようとしています。このチャットボットは、顧客の質問にリアルタイムで回答でき、オンラインでのショッピングの体験をよりインタラクティブにします。他にも、SalesforceはOpenAIの技術を自社のCRM(顧客関係管理)ツールに組み込んでいます。同社はChat GPTをSlackに組み込むことで、チーム間のチャットの要約、リサーチ、ライティングの支援にも活用しています。Snapchatは、OpenAIの高性能な言語モデルであるGPTを使った新しいAI機能の提供を開始し、ユーザーが夕食のレシピを見つけたり、週末の旅行を計画したりするのを支援します。Shopifyも、顧客が効率的に商品を検索できるようにするためにこの技術を使用しており、ユーザーのリクエストに基づいたレコメンドを今後実装する予定です。 https://www.axios.com/2023/02/28/chatgpt-ai-sell-fiat-cars
しかし、ChatGPTのような強力なツールは、悪意ある方法で使用されることもあります。例えば、ニューヨーク市の公立学校区は、学生が作文や論文の課題にその力を悪用する可能性があるとして、ChatGPTの使用を禁止しています。 また、複数の大企業が自社のビジネスでの使用に制限をかけています。センシティブな情報を扱う銀行業界では、JPMorgan Chase、Bank of America、Goldman Sachs、Deutsche Bankといった企業が、従業員のChatGPTの利用を制限しています。 AmazonでもChatGPTの今後のトレーニングデータとして社外秘データが使われるリスクを回避するために、ChatGPTの使用に制限をかけています。 https://www.cnn.com/2023/02/22/tech/jpmorgan-chatgpt-employees/index.html
AIは何年も前からバズワードでしたが、ChatGPTの大成功により、多くの企業がAIで訓練されたチャットボットを導入して自社製品の市場開拓に活用しています。Google、Meta、Alibaba、Baiduなどの大手企業も、OpenAIに対抗したサービスを開発しており、Microsoftにリードを広げられないようにしようとしています。AIチャットボットの技術が成熟していく中で、より多くの活用方法が生まれることが考えられます。このテクノロジーが半年後や5年後にどこまで進歩を遂げるかを予測することは難しいですが、様々なアプリケーションに組み込まれることで、新しい市場を生み出す可能性を秘めています。みなさんもこの動きに既に着目していると思いますが、AIを活用したサービスの導入や自社ビジネスの変革にAIを取り入れる活動を、これまで以上のスピードで加速させて実践していく時期が来ているのではないでしょうか? https://www.theverge.com/2023/3/5/23599209/companies-keep-up-chatgpt-ai-chatbots
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