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  • David Peterman

Issue 174 - 2023年のCESとダボス会議

今回のSeattle Watchでは、2023年1月に開催された世界最大のテクノロジー見本市であるCESと、世界経済フォーラムが主催するダボス会議で発表または議論されたことについて紹介していきます。CESでは例年に比べるとディスラプティブ(破壊的)な発表は見られませんでしたが、その中から「ウェルビーイング」と「モビリティ」に注目して、いくつかの気になった企業をお伝えします。

 

CES(Consumer Electronics Show)は、最新の製品やイノベーションが各社から紹介される世界最大級のテクノロジー・トレードショーとして有名です。今年も1月上旬にラスベガスで対面の形で開催されました。今年のCESには、11万5000人以上の参加者と3,200社の出展者が集まり、昨年の4万5,000人を大きく上回りました。


CESは消費者市場の主流になる可能性のある革新的なテクノロジーを紹介する大規模な製品発表の場として知られていますが、今年はディスラプティブ(破壊的)な発表よりも、段階的な進化をテーマにしたものが多かったように見受けられました。ローリングストーン誌のSage Anderson記者は、この背景には、今も続く継続的なインフレ、サプライチェーンの問題、製造の遅れなどがあるのではないかと推測しています。 https://www.rollingstone.com/product-recommendations/lifestyle/ces-2023-highlights-lg-sony-samsung-lenovo-1234659610/


もうひとつ注目されたのは、自社のサステナビリティへの取り組みをアピールする出展者の数が多かったことです。GreenBiz GroupのアナリストであるVartan Badialian氏は、「CESで展示されたものの多くが、少なくとも部分的には、持続可能性や気候変動に対処するために提示されたものであり、テック業界は気候テックの世界に変容しつつある。」と述べています。例えば、Samsungは、衣類の洗濯中に発生するマイクロプラスチックの排出を減らせるEcobubble技術を搭載した洗濯機を開発しています。また、自動運転などで使われるLiDARセンサーを製造するOusterは、氷冠(氷河の塊)融解を極めて詳細なレベルでモニタリングできるLiDARセンサーを発表しています。 https://www.greenbiz.com/article/ces-2023-electric-software-based-and-sustainability-focused


今年のCESでは、さまざまなイベントが開催されましたが、その中でも私たちが特に注目したのは、「ウェルビーイング」と「モビリティ」の分野です。Webrainでは過去にこの2つのテーマで記事やレポートを発行しており、今年はどんな新製品やサービスが発表されるのか期待していました。まず、ウェルビーイングの分野での製品をいくつか紹介します。

  • 米国食品医薬品局(FDA)は、軽度から中等度の難聴者向け製品を対象に、医師の処方を必要としない補聴器の店頭販売(OTC)を許可する決定をしました。そのため、これまで1万ドルもした補聴器は、新規参入する家電メーカーの安価な補聴器と競争することになります。CESでは、JLab (https://www.jlab.com) が、わずか99ドルで販売され、ユーザーのスマホと連動するOTC補聴器を発表しました。また、Eargo(https://www.eargo.com/)は、携帯キャリアのVerizonの店舗で自社のOTC補聴器を販売しており、難聴に悩まされてきた多くの低所得者層にとって画期的なことかもしれません。この市場には、Jabra、Sennheiser、HP、Sonyなど、多くの家電メーカーが参入していることも注目されています。 https://www.wired.com/gallery/best-of-ces-2023/ https://www.fastcompany.com/90830531/hearing-aids-innovation-sony-sennheiser-ces

  • ITRI (https://www.itri.org.tw) は、サングラスのテンプル(蝶番から耳にかかる部分)に低電力のレーダーセンサーを組み込んだiSportWeaRと呼ばれるデバイスを発表しています。iSportWeaRは、他のウェアラブルとは異なり、ユーザーの体に直接接触することなく、心拍数、呼吸数、運動量などの指標をモニタリング・記録し、怪我の予防や熱中症などの症状の回避に役立てることができます。

  • Somalytics (https://somalytics.com)は、より良い睡眠を支援するセンサー付きの軽量アイマスクのSomaSleepを発表しています。この製品は急速な眼球運動を検知して、それをスマホアプリで分析することで、睡眠パターンに関する洞察を得ることができます。SomaSleepは今年の12月から199ドルで販売予定です。 https://www.cnet.com/health/fitness/game-changing-wellness-gadgets-at-ces-that-are-redefining-health-tracking/

  • Caducy (https://www.caducy.com) は、i-Virtualというアプリで健康状態を簡単に評価する方法を提供しています。ユーザーは30秒間の自撮り動画を撮影するだけで、アプリはクラウドベースのAI分析を使って、心拍数や呼吸数、ストレスレベルを評価します。これらの情報は遠隔診察などに使用されます。このi-Virtualは、他のウェルビーイング企業が提供する製品に統合可能な形で提供される予定です。


モビリティ分野では、ホンダ、クアルコムと共同開発したソニーの電気自動車のAfeela(https://www.shm-afeela.com/en/)の発表が今年のCESの目玉イベントのひとつでした。しかし、それ以外にも注目すべき発表がいくつかありました。

  • Lightyear (https://lightyear.one/) は、太陽電池をフルカバーし、太陽の下にいればいつでも充電できることを特徴とする電気自動車「Lightyear 2」を発表しています。太陽電池によって長距離走行で500マイル(約121km)もの距離を走ることができます。同社によると、2025年に生産を開始し、4万ドル以下で購入できるようになると伝えています。 https://spectrum.ieee.org/ces-2023-best-tech

  • BMWが発表したコンセプトカーである「i Vision Dee」(https://www.bmwusa.com/concept-vehicles/ivision-dee.html)も、あまり実用的ではないかもしれませんが注目されました。このクルマは、ユーザーの感性と対話しながら現実世界と仮想現実をつなぐデジタル・コンパニオンとしての役割をもち、240枚のE-inkパネルで覆われた車体は、カラーとパターンをほぼ無限の種類でカスタマイズできます。まだコンセプトの段階のため、この技術がいつ、どのように商用化されるかは分かっていません。 https://www.popsci.com/technology/the-coolest-cars-from-ces-2023/


CESは華やかで派手なショーのため人々の注目を集めましたが、1月中旬には世界経済フォーラム(ダボス会議)も開催されました。毎年開催されるこの会議には、世界中のビジネス、経済、政治のトップリーダーが集まり、世界の現状と将来の状況を評価しています。そこでは、インフレ、金利、景気後退の可能性が、企業の支出削減やレイオフにつながる状況を悪化させていることについて、多くの議論がなされました。その中で少し気になった発表の一部をお伝えします。

  • 米国労働長官のMartin Walsh氏は、米国で進む人手不足を、より多くの外国人労働者で補う必要があることを明らかにしている。

  • VolvoのCTOであるLars Stenqvist氏は、5年以内に米国で完全自律走行型トラックが道路を走るようになると予測している。

  • ロンドン・ヒースロー空港のCEOであるJohn Holland氏は、2023年末までに世界の飛行機での旅行の需要は回復し、コロナ流行前の水準に戻ると述べている。


これら以外に特に気になったトピックがあります。それは参加したCEOたちの間で大いに議論されたトピックの1つでもある「ジェネレーティブAI(生成系AI)」についてです。特に、テキストプロンプトから全く新しい画像を生成できるMidjourneyや、人間が書いたようなストーリー、エッセイ、記事を出力できる対話型AI のChatGPTといったプログラムは、皆さんもよく耳にしていると思います。このトピックは非常に興味深いので、今後のSeattle Watchでも紹介していく予定です。 https://www.reuters.com/technology/davos-2023-ceos-buzz-about-chatgpt-style-ai-world-economic-forum-2023-01-17/


今年のCESとダボス会議では、何か世界を揺るがすような画期的な技術やトレンドはあまり出てこなかったように思います。しかし、ローリングストーン誌のSage Anderson記者は、「常に新境地を開拓する必要はない。すべての新しいテクノロジーがその企業にとって最大のリリースである必要はないし、仕事やコミュニケーション、旅行、日常生活の過ごし方にまで常に革命を起こし続けなくてもよい。ほんの少しの工夫が、デバイスの可能性を最大限に引き出す隠し味になることもある。」と述べています。このような時期には、カイゼン(Kaizen)をお家芸としてきた日本企業のプレゼンスが試されるかもしれません。 https://www.rollingstone.com/product-recommendations/lifestyle/ces-2023-highlights-lg-sony-samsung-lenovo-1234659610/


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